- 何を見て四季の移り変わりを実感しますか?自然の豊かな昼神温泉で仕事をしている私の場合、感じているものはいくつかありますが、その中でも一風変わっているのが、柳の綿が飛び始めることです。
見たことのない人にとっては、「柳に綿があるの?」と言われそうです。柳の綿とは綿毛の付いた種子のことです。タンポポの綿毛よりは少し大きい一ひらを掌に受けてよく観察すると、芥子粒ほどの小さな黒い種子が見えます。これが風に乗ってまるで雪のように空中を浮遊し、淡雪のように薄らと地面を覆うのですが、朝日を浴びながら飛び漂う様は、なかなか素晴らしい見ものです。
- いつの頃からか忘れてしまいましたが、昼神温泉を流れる阿智川を5月の上旬に散歩すると、それこそ目も開けられないほど、マスクなしでは吸い込んでしまいそうになる程に、柳の綿が浮遊します。これを柳絮(りゅうじょ)と称し、古来、漢詩によく詠まれる風物詩だったようです。
日本にも柳は少なくありませんから、柳絮(りゅうじょ)がもっと話題になってもおかしくはないのですが、見たこともない人が多いのではないかと思います。私はよく知らなかったのですが、柳は雄雌異株ということでした。それなら当然ながら、雄の株からは発生しません。そして日本にある柳のほとんどが雄株であるため、めったに見られないそうです。
- 柳は挿し木で簡単に発根するため、種子から増やすことは絶対にありません。そのため雌株が必要とされることもなく、奈良時代に唐から雄株の柳が伝えられたため、日本の枝垂柳はほとんど雄株ばかりなのかもしれません。
とにかく、角をみれば座布団が何枚もできてしまうのではないかと思うほど、沢山の綿がある事に気が付きます。お部屋に入ってきたり、お客様のお車に舞い込んだりと、気が気ではないのも事実なのですが、本日のような穏やかな天気の中を舞い踊る柳絮(りゅうじょ)は、本当に感動します。時の流れが日頃と違って感じられ、天使か天女が降り立っつのか・・・と神秘的な印象をうけます。初夏に見る雪のようです。
昼神温泉の桜と花桃を堪能した後の、これも一つの名物と言えますね。まだ見たことが無い方、今がその時です。是非、お出かけ下さい。
「時ならぬ柳の綿は雪なるか 吹けばかそけく空にとけゆく」