- およそ10年程前になるかと思います。当時、石苔亭いしだの代表取締役を任される事になり、経営者としても未熟でありながら、リーマンショック、東日本大震災と観光事情が通常とは違う中で、売上も大変、社内の組織も組織としての機能が動かない、退職者も続出し、第2子の出産もあり、自分の体も、頭も、心も1つしかないのに、あらゆる方面から困難が立ちはだかる、そんな八方ふさがりを経験していた時でした。何の前触れもなく就職先を探しているのですが・・・・と石苔亭いしだに電話をくれたのが、彼女です。直ぐに面接に来てほしいと伝えながら、彼女は関東から車を運転してきてくれたことを今でも覚えています。それから還暦を迎え、ご家族の都合等もあり、当社を退職するまで、本当に大変な日々を彼女は文句の1つも言わず、いつも感謝の心を根っこに持ちながら、柔らかな品のある微笑みを絶やさず、貢献してくれました。彼女の存在は、ボロボロになりそうなギリギリの自分を、救ってくれ、正しい心につなぎとめてくれる存在となったと思います。あの時の出会いが無かったら、今の石苔亭いしだはまた、違っていたと思うほどです。
今日は新しい職場の友人を連れてご宿泊に来てくれました。以前と変わらない優しい微笑みに、当時の事が蘇ります。こんな風に周りの人を優しく守れる人になりたいです。私は、自分の人生を振り返ってみると、案外いろんな場面で、その時の出会いに助けられてきていると感じます。そう思う度、
自分では気が付かないうちに、多くの方々から、「恩」を頂いて生きてきており、残念にも私は、その「恩」を頂きっぱなしで過ごしてきてしまっていると思うのです。もちろん、気づけたのなら返してゆけばいい。でも、何をどう返せばいいのか、あるいは、返せたとしても、多分満足できません。頂いた「恩」に恥じる事が無い人生を歩むこと、そして、私が恩恵を頂いたように、私もその分、これから出会う方々の中で報いて行ける人生を歩むこと。そうやって、人から人へやさしさの連鎖が途絶えることなく続く事を願い、正直で、誠実に、幸せになることを諦めないで生きてゆくことだと思うようにしています。自分が納得いくほどには、全くできていないので、まだまだ未熟だと感じる毎日ですが、こうしてまた、大切な人に再開することが出来ました。ここからリスタートです。